いきさつ
子どもが、学習塾の勉強で
好成績を上げた褒美としていただいた
腕時計が故障した。むげに、
新品に買い替えては、とは、言えない、
とのことで、
修理の依頼、を引き受けた。
状態を観察1
時計を修理するにあたり観察する。
子供向けではあるが、大人用の時計を、そのまま
転用しているので、機能的には大人も十分使える、
精度も一流品である。
捨てるにはもったいないし、何より子供のプライドを
尊重したいということで修理に入る。
状態を観察2
不具合点の情報
ストップウォッチが使えない。
四つの押しボタンが設けられており、内
start-stoppのボタンが動かず使えないとのこと。
他の三つの押しボタンは正常に使える。
むー工房としての調査。まずは
外観から。
押しボタン自体はキズや変形などは無く、
汚れもさほど、ついてない。
ケースはプラ製で、
ムーブメント(?デジタルじゃね)
を格納し、SUS製の裏蓋で封印している。
外観からは特に異常なし。
異常なしと判断し分解へ。
裏蓋のビス4個を、時計用ねじ回し+で緩め、
ムーブメントを取り外すと、四つの押しボタンが
ケースに残されたままになる。防水用のOリングもOK。
ムーブメントにも、ボタンが4か所ある。
ムーブメント単体を調査。
ボタン4か所を順に押してゆく。
ストップウォッチその他の動作も正常だ。
ムーブメントは故障してないと確信。
外装ケースを調べる
裏蓋からムーブメントをはずしたままの状態で
押し釦を外側からそれぞれ押してみると、
むむ、
ストップウォッチ用が動きづらい、まだ、
理由は分からない。観察を続ける。
構造詳細観察
1目視で観察
押しボタン(時計の外側)からピン(一体構造)が
ケース内まで貫通しているようだ、
ピンの先端(ケース内側)に抜け止めのリングが
圧入されている。
押し釦は4ヵ所あり、おのおの
ピンとリングが繋がっているのだろう。
2さらに観察
発見!
ストップウォッチのボタンのみ、抜け止めの、
Cリング(外径2㎜内径1㎜)が付いてない、
あれ?。他の
三つのボタンのピンには付いてるけど。
3疑問がここでもまた頭をよぎる。
疑問
抜け止めが無いのに
抜けてしまわないのは何故かな?、
観察を続けたが、部品類の
損傷は見られず、手詰まりとなった。
疑問の確認のため
ピンを、ピンセットの先でケースの
内側から外向きに押し出してみる。
押し釦が浮き上がってきたので、次に、
押し釦(四角形)を外側から
ピンセットでつまみ、ケースから外側へ
引いたところ、抜けてきた。
疑問点の抜け止めが無い。
ここは問題だ確信した。
押しボタン観察もここで。
押し釦に、直角にピンが植えられた形状が
確認できた。
ピンの先端部には抜け止めの、
Cリングのはまり込む
溝が切ってある。 次の写真参照あれ
押しボタン(プラスチック)とピン(金属)の
結合は、特に問題(変形・ゆるみ)は見えない。
四角い押しボタンは、
ウオッチのケースに、四角い押しボタンの
はまる枠、が作ってあり、そこへ
きれいに収まる。
極わずかなホコリは絵筆で払った。ボタンの動きに
支障をきたすような大きな
傷や変形は見当たらない。観察終わり。
設計の良さは発見
押しボタンのピンとケースのスキマ、からの水分等の
侵入を防ぐOリングがセットしてある(そこそこの製品
だなーおもちゃではない)。
ここで、押しボタンが抜け落ちなかった要因が、判明、
このOリングがピンを掴んでいて、押し釦が抜け落ち
なかったと思われる。
異常1 発見
枠の中に金属の平らなリングがある(ころがっている)
Oリングの保護用と判断(座金と呼ぶ)。
(押し戻し用のバネがもしも存在したら
必要しかし・この時点ではバネは見当たらない)
異常2 発見
押しボタンを押し戻す部品(システム)が見当たらない。
正常では、ボタンを押すと時計の内側にへこみ、離すと
外へ戻って来る、極々普通の押しボタンである。
一般的には、バネで押し戻すだろうと推測。
腕時計の修理にここから取りかかる。
改造1点目
(組立作業の適当な品質管理には
あきれたが--madeinC)。
バネをまず製作
ボタンを押し返すバネが 必要と判断 。
近所のホームセンターで押しバネを探し、
店頭で一番小さいバネを購入
(線径0.26x外径2.5x長さ9)¥150.-程
購入したバネを、長さの半分で切断し、
切断した側の一巻きを直径1.2㎜キリを
芯がねにして、巻き径を小さく絞る。
長さの中央部を
巻き径4㎜ほどに膨らませる。
もう片方の端部も1.2mmに絞る。
(一般に樽型と呼ばれ、押しばねとして使い
ストロークを長く取れる形状であるーーー
そこまでには美しく出来て無い ^▲^;)
試作を3回行い、何とか満足できる形状に出来た。
改造2点目
抜け止めCリング製作。
バネを作り、押しボタンと組み合わせてみるが、
押しボタンがバネの力で、枠から飛び出すので、
抜け止めリングを、やむなく製作。
0.25㎜の金属板に直径1.2㎜のキリで厚みの
半分まで穴明けし、
ピンとのはめ合わせを(通り抜けないほどの穴)
確認して、
外周をヤスリで丸く(ほぼ丸く)削る。
(金属板はジャンクの中から、電気の接点を支える
幅5mmのリン青銅板を使用)
虫眼鏡とラジオペンチとヤスリで格闘し成形した。
Cリングが本来の形だが、そこまでの整形は断念して
円形のリングで済ませた。抜け止めリングの完成。
組み立てようやく組み立て1
Oリングを戻す
小さなOリングと金属リング(もとから組付けられて
いた部品)をウオッチケースに作られている
四角いくぼみの底に開けてある、
丸い小さな穴ぼこにセット、もともとの組み合わせ。
おさまりが良く、こぼれることは無い。良く
出来ている。
押しボタンのピンに、(先に製作済)
バネを装着。
(1.2㎜側がOリング&ウオッチケース中心方向)
そのままピン(押しボタンと一体もの)を
ウオッチケースの穴に差し込む。
金属リングとOリングを貫通させる。
抜け止め取り付け
ケース内側からピンが見えたら、
先に製作していた・抜け止めリング・を力づくで
押し込む。
押しボタンの組付け完了。
ーー抜け止めリングに穴開けする際の
穴開け加減がカギ。ーー
組付け加減をチェック
押し釦を押してみて、反力の程度を
他の三つのボタンと比べて、同程度の感触に
出来上がった。ムフフ。
組み立て2
ムーブメント組付け
ムーブメント?をウオッチケースに戻す。
押しボタンに対峙する4か所のボタンが
押しボタンのピンに引っかかるので、
4か所のボタンを、時計用ねじ回し̠⊖で
かわしながら、ウオッチケースに戻してゆき、
ムーブメントの取り付け完了。
裏蓋取り付け
最後に裏蓋(ウオッチケース蓋)を付ける
水分などの侵入を防止するOリング
(ゴム製の細くて内径が30㎜ほどのもの)が
組み込まれているので、溝から外れてないことを
確認しながら、4本のビスを時計用ねじ回し̟⊕で
固定して完了。
動作確認
時計の動作、ストップウオッチ、時刻設定、
表示変更、を確認して、
正常であることが確認できた。
◎◎◎ 修理完了。
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